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刃長 二尺三寸三分(70.0) 元重 二分三厘(0.7)
反り 五分三厘(1.6) 先重 一分七厘(0.5)
元幅 一寸六厘(3.2) 鋒長 一寸六分五厘(5.0)
先幅 八分三厘(2.5) 茎長 六寸一分(18.5)
目釘穴 一個(茎尻に半穴) 金着二重ハバキ
鎬造り。反り浅目の庵棟。身幅広く、重ね薄く、元と先の幅差が殆どつかず、切先の伸びた南北朝期を伺わせる大太刀姿。板目肌良く練れて詰み、杢目交じり厚く地沸つき、肌に絡んで地景入る。刃文匂口深く明るく小沸が細やかに働く、尖り刃を交えた小互の目乱れ。刃中小足入り、砂流し入る。鋩子乱れて小丸に浅く返る。表裏に棒樋を掻き流す。大磨上げ無銘。鑢目切。茎棟角、茎先切尻。水牛角目、小口付き上白鞘。佐藤寒山氏鞘書あり。678g。
鎌倉最末期に大和国より手掻派の兼氏が来住し、志津(現岐阜県海津市南濃町志津)の地で一派を形成、相州正宗門人と伝わる兼氏は、この地で大和伝に相州伝を加味した美濃伝の基礎を築いた。兼氏死後、その門弟であった兼俊、兼友、兼延、兼次らが、志津から程近い直江(現養老郡養老町直江)の地に移住して鍛刀した。この地で活躍した兼氏の門弟達を総称して、『直江志津』と呼ぶ。この頃は南北朝期の争乱、美濃国土岐氏の内紛等によって、刀剣の需要が急速に高まった時期、これらの特需に応えた一派は、大いに繁栄した。
同派の作風は、師伝を良く継承しており、地鉄は板目に杢目を交えて流れ心に肌立つもの、小板目が流れ心に詰んだもの等があり、刃文は湾れ調に互の目、丁子、角張る刃、尖った刃、矢筈風の刃を交えて、刃中金筋、砂流し掛かり、匂い口の明るい刃を焼きます。仔細に見ると、焼き頭に丸みを帯びた小互の目、尖り刃の目立つ点が直江志津の特徴とも言える。
なお、日本美術刀剣保存会では兼法と極めている。兼法に出自については赤坂千手院系の奈良派とされ、現存するものでは明応八年紀(1500)の太刀があり事実上の初代とされる。年紀作資料の不足により定かではないが、その銘振りより室町時代末期までの約百年間に五人程の『兼法』を名乗る刀工がいる。
天文頃の兼法は、宇留間(現在の各務ヶ原市鵜沼)に住したのち越前国一乗谷に移住し『越前一乗住兼法作 天文十年八月日』の作品を遺している。また同じく遠州浜松に移住したものは『遠州住兼法』などと刻した作刀がある。天正頃になると信州伊奈へと出向するものや駿府に移住した『兼法』がある。
ただし、本作の寒山氏鞘書極めも捨てがたく、大磨り上げ無銘ながら寸法二尺三寸三分、鎌倉末の小切先から南北朝期の大切先に変わった頃の姿を示し、グッと延びた切先、幅広で元先身幅の差が少ない南北朝中期の太刀姿、いわゆる延文貞治姿の典型を示している。手持ちもしっかりとして地刃すこぶる健全で、柔らかな柾肌を交えた精良な小板目肌は、細やかな地景を配し、広範囲に渡って白け映り判然と立っており、小互の目乱れを主体とした刃文は、尖り風の刃、頭の丸い互の目、湾れを交えて、刃縁に光りの強い小沸が良く付き、刃中繊細な金筋、砂流し掛かり、匂い口も明るく冴えている。破綻のない澄み渡った地鉄、焼き刃も染みるような箇所は皆無、穏やかな刃調だが、地刃の冴え、沸の美しさ、同派最上レベルと鑑せられる。
手に取られて、最後の極めは貴方がなさってください。